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熱海合宿

  • 2016年12月8日
  • 読了時間: 11分

更新日:2020年9月24日






山伏峠(やまぶしとうげ)は、静岡県伊豆の国市と熱海市を結ぶ峠で、ここを越えると晴れた日は相模の海原や、沖の初島・大島も視界に飛び込んでくる。太平洋からの強い風が吹き寄せると、この辺りまで届いて木々の枝葉を鳴らすらしい。

夏ならば青々した空と周囲の真緑の山々のコントラストが美しく、晩秋は富士の雪景色を背景に紅葉が上手い具合に自然林と混ざり合い、どちらも屏風絵のような世界が現れる。

いまは、昏(く)れなずむ冬の陽が天城連山のなだらかな稜線をやさしい茜(あかね)色に変え、北に見える初冬の秀峰富士は、空気が乾いているせいか夏のそれに比べ色鮮やかに見える。

伊豆大仁カントリークラブを出る時は、陽はかなり傾いて、ひんやりとした空気が足元を攫(さらっ)たが、峠の少し高台を走ると下界の熱海の街の燈火(ともしび)が牡丹(ぼたん)色や菖蒲(あやめ)色に暖かく輝いて見えた。

「良いコースだったね。メンバーの人も言ってたけど、今日みたいに、こんなに綺麗に見える富士山は、年に1・2回しかないんだって!」

「本当。銭湯の富士の壁絵を思い出しちゃったよ。目の前にドーンと大きく描いてあるんだもん。このサイズ感は気持ちが良いな」

「ところで、今夜、夕飯食べたらどうする?」

「街に繰り出す!?」

クルマの中では、こんな会話が始まっている。

今回、天中23合宿の勇士メンバーは4名。大木選手、神田選手、田胡選手、酒井。皆で温暖な熱海温泉郷に繰り込んで、盛大な酒宴を設け一泊する。その日も翌日も熱海周辺のゴルフコースでラウンドし帰路に就く。

初日は、「伊豆大仁カントリークラブ」

毎年7月末に行われるLPGAの開催コースである。(センチュリー21のトーナメント)

標高425Mの所にある丘陵コースで、アップダウンは少なく、フェアウェイは広く、優しく見えるが、要所要所に白砂が眩しいバンカーが巧みにレイアウトされている。

27ホールで各ホール2グリーン。今回は天城→箱根、Aグリーンの距離が若干長めの方が設定されていた。

レギュラー・ティで6,437ヤード、コース・レイティング70.2 (バック72.3)

コース設計は、和泉一介(巨匠 井上誠一の元でゴルフ設計を学ぶ)

気温15度(熱海と同じ)、無風。師走にしては、麗(うら)らかな日和である。

天中23の勇士は、プロのゴルフトーナメントが開催されるコースを選定し、難コースに挑んだ。一年の締めくくりに相応しいゴルフコースではあるまいか。

井上誠一は設計理念でこんな風に語っている。

「未熟で粗削りな少女を、品ある成熟した女性に変身させることと同じ」。

美しいゴルフコースは、時折、女性の肉体を思わせるようなやわらかさと鋭さを以っている。伊豆大仁GCにもそんなコースがある。

何故、女性に例えるか。それは征服が難しいという意味なのであろう。

そんなコースの中を颯爽とプレーしている勇士は、まことに美しく、この一年が平和であったことを物語っているように見える。

その日は遅めの午前10:10スタートにした。

一番のティーグラウンドに立ち、挑むような眼つきでフェアウェイを睨み、左右のOBとバンカーの位置を確認した。バンカーまで250ヤードは有にある。オナーは田胡選手。ティーグラウンドの傍には山茶花(さざんか)が一輪だけ、けなげに咲いていた。

難コースだからといってムキになってむかって行くと誰かにからかわれているかのようにひどいゴルフになる。逆に己の実力がわかって力量以上のことを望まずにプレーをしていると思わぬ幸運に巡り合える。

そういうゴルフをしていれば、良い感触を得る一方で新たな課題も自然と浮上してくる。挑み続けることで得られた感触は身体が記憶している。それを忘れないようにすることが肝要ではないか。ラウンドを終えロッカールームで着替え終えた後、皆の顔は清々しい良い表情をしていた。

「グリーンが難しいね。上りは重く、下りは高速。芝目はキツイ!」

ピン位置にもよるが、お椀型や馬の背のグリーンで、それ程傾斜がキツクないように見えるが、順目で高速になったり、逆目で重く走らなかったりで意のままにパッティング出来ず、男を知り尽くした女が我々を揶揄(からか)うように、弄(もてあそ)んでいた。

女性の肉体の柔らかさだったり鋭さだったり、その場しのぎではいかない“奥深さ”を直に感じさせるグリーンであった。

「夏の涼しい時にリベンジしますか。」

「また鼻の下を伸ばしているとバカにされるかもよ!」

その日のゴルフで興奮したせいか、クルマの窓を少し開けると、熱くなっていた頬に爽やかな山風が心地良かった。癖のある都会独特の匂いもなく、べとついた感じもない乾いた風だった。夕暮れの山間(やまあい)は夜の帳(とばり)が落ち始め、窓を閉めると突風がクルマの窓を叩いていた。

「夕食後、部屋で飲もうと思ったんだけど、熱海の銀座通りにでも出掛けてみましょうか?」

峠道から国道135号に出ると、もう、熱海の街の灯りが色濃く染めていた。車窓を流れる街の夜景を見ていると脳に適度な刺激をあたえ、ついあれこれ妄想してしまう。

「若い子がいるお店とかは、ないんですかね。」

「なんか危険な匂いがする処も魅力的だなぁ~。」

我々四人の眼に映ったこの艶色の光彩は、いままでの爽やかな気分とは違うものに少しずつすり替わっていく。まるで、いままでこの時を1カ月以上前から待っていたかのように、胸の内では小さい虫がいっぱいうごめき始め、急にそわそわと落ち着かない様子であたりをキョロキョロ眺めている。今夜のことがよぎっているのであろう。

余談だが、今、熱海市は映画やドラマ、TVの情報バラエティのロケ数で年間

100件超にまで急増し、そのメディア露出よって誘客増を図っているようだ。

熱海の宿泊客が2015年度、14年振りに300万人超えたらしい。

「温泉と言えば熱海」という時代はあったが、今はその衰退していた温泉地を市の観光職員が行うロケ地支援事業、「ADさん、いらっしゃい!」をフレーズにV字回復の兆しを見せていると云う。

だが、我々が実際に見た熱海の商店街は、驚くほど様変わりをしていた。八百屋、魚屋、肉屋、米屋、酒屋、洋品店、仕立て屋、履物屋、建具屋...、まだ夕方の6時前だというのにほとんどの店のシャッターが降ろされ、すれ違う街の人も少なかった。逆に店を開けている店主が、お上りさんのような我々を見て、“あれ、客かな?”というような期待を持たせてしまったようで、逆に申し訳なかった。

― 街と人が消えていくのか...そんな風にも感じた。

宿に着きチェックインを済ませ、ゆっくり宿の温泉に浸かることにし、夕食は遅めの19:00にセットした。

風呂から上がって、夕食まで少し時間があるので部屋で軽く飲むことに。

「ネェ、ネェ、本当に、本当の可愛い子がいるの?」

「HP見るとブログがあってね、女の子の生写真、もう、た~くさん!若くて、かわゆ~い子ばかり!」

「もう目眩(めまい)しそう!」

「クラ、クラ、クラ、って奴ですよ!」

「えっ、クラッ、クラッのクラクラちゃ~ん、ですか!」

「あ~、もうバカ丸出し!」

閑話休題。

あと数日で、一年が過ぎようとしている。

年の瀬になると、男は同志で連(つる)みたくなる。ましてや同時代に生を受け、多少の時間差はあるにせよ、同じ時代に生を終える仲間と一年の四方山話(よもやまばなし)をすることで温かい安堵の情を覚える。

酒を呑んでいると、こいつも年を越すのに苦労しているのだ、と同類の匂いを嗅ぎ取ることが出来る。世の中には理不尽な扱いを受けて唇を噛んでいる奴が多い。順調に行っているものは、そこらが察せられず自慢話をしたりする。別に順調が悪いのではなく、世の中は上手く事が進まない人の方が多いだけのことである。

そんな世知辛(せちがら)い世の中でも、良き友と酒を呑み、語り合うとぽっかり空いた胸の穴に、友が泉のような潤いを与えてくれる。洟垂れ(はなたれ)小僧の青かった男の器が、生きて行くたびに、ひび割れたり歪んだりするが、友と“呑む”ことによって深い安堵で修復される。

一緒に酒を呑み、ゆるりとした時間を過ごせば、この一年で辛酸を味わったとしても、その高ぶりが少しは和らぐのではないだろうか。

天中23ゴルフは、年の瀬に“連み”、“呑み”“語る”のである。

「それでさっきの話の続きだけど、そのお店に早く行こうよ!」

「オレはね、ナイス・バディーのプルッ、プルッ、プルッのプルプルちゃんがいいなぁ~!」

「俺も言っていい。フェロモンたっぷりのフェロ、フェロのふぇろふぇろちゃんだなぁ~!」

「ほら~、いつまでバカなことを言ってるんだ。女の手も握れないくせに!」

「まだ、6時だぜ、やってないよ!」

「まずは、宿自慢の“季節の旬彩舌鼓”の夕食を頂きましょうよ!」

「旨そうだな!」

「行くぞ!」

ゴルフも人生同様、順風満帆には行かない。だから、ああでもない、こうでもないと言って、合宿を張り一つ屋根の下で寝、同じものを食し、酒を交わし、ゴルフにいそしむ。

“今年こそは!”と思っても、気が付くとその年も同じような年で終わってしまう。来年こそは。。。と、そんな風な気持ちが肝要であると思うが、情熱が消えてしまうことが老いるということであるならば、この合宿は続けなければいけないと思う。

身体は老いても、良き友との“絆”、“信頼”、“友誼(ゆうぎ)”を大事にし、ゴルフをやり続けるという気概を持つことに意味があるように思う。

「お腹いっぱいになったし、そろそろ、行きましょうよ~。」

「ちょっと、お店に電話してみるか?」

「ハイ、営業しております。今、お店に6名の若い女の子が待機しています。まだ、お客様は一人もいらしておりませんのでごゆっくりとお楽しみ頂けます。」

「おい、まだ誰も来てないって!貸し切り状態だって!」

翌朝、誰かがトイレに行く足音で目が覚めた。隣人は私とは同じ向きに寝ているのだが、浴衣の裾が開(はだ)け、うつ伏せの恰好で羽毛の掛布団を太ももで挟み、熊のような長毛の足が、ごそごそ、もぞもぞと動いている。

かと思うと、カーテンを開けて、昇り始めた朝陽に乾杯している仲間もいる。

「この方角だと、三宅島まで見える日もあるよ!」

っと、言った友は真顔で海を眺めているが、それを聞いてる仲間は疲れと二日酔いでなかば朦朧(もうろう)としていた。

軽く頭を横に振りながら朝食の用意された大部屋へゆっくりと足を運んだ。

「おはようございます」と和服姿の美人女将が丁寧に挨拶をするのかと思いきや、受付には誰もいない。朝食券を受付の箱に入れて誰もチェックをしない。

どこも人手不足なのかもしれない。

昨夜は、おもねるような口振りで誘ってはみたが、起床が早かったからか、それとも疲労からか、重い腰は上がらず、結局は何処へも行かず部屋で酒を呑むことにした。

チェックアウト後、2台のクルマは国道135号線を南下し、雄壮な相模の海景を眺めながら、南熱海と言われる伊豆多賀、長浜の海岸線を走り続けた。

群青色した海面には僅かに白波が立ち、若者が堤防周辺を気持ちよくランニングをしている姿も見受けられた。長浜海水浴場の手前で、伊豆スカイライン方面に斜めに右折すると伊豆半島を南北に連なる400M前後の低い尾根が雲間から見えてきた。朝はまだ寒々しい山景であった。

起伏のある県道を走り抜け、山伏峠を経由して、さらに南下すると亀石峠(かめいしとうげ)にぶつかる。丘陵地の中腹にある蜜柑畑に黄色い実がいくつも陽を受けていた。亀石峠は伊豆の国市と伊東市を結ぶ峠で標高451Mの処にある。対向車に注意しながら山径を登っていくと、亀石峠の料金所が見えてくる。そこからすぐのところにその日のゴルフコースがある。

二日目は、「大熱海国際ゴルフフクラブ」

実は、大熱海国際ゴルフクラブは昨日の伊豆大仁CCの隣のコース。

大熱海国際GCは開場50周年を迎える伊豆の名門ゴルフクラブ。標高は伊豆大仁CCと同様に450Mの処にある。谷越えのショートやドッグレッグなど変化に富んだレギュラー・ティから6,000ヤードのコース。設計はJ・Eクレーン。(リソルグループは全国に18のゴルフ施設を所有)

気温17度で昨日よりも若干高い。春のような暖かな日和であるが、風がやや強く日陰は寒い。

チェックイン後、神田選手はロビーで偶然、親戚(従弟)と遭遇。

久し振りの再会にハグを繰り返していた。

昨日のラウンドの疲れと今朝の起床時間が少し早いこともあって、少々寝不足気味の我々ではあったが、この大熱海国際GCからの眺望も美しかった。

澄み渡る青空に気高い雲。美の象徴のような秀峰富士。山肌を覆う樹木・味わい深い草花。相模の青々した大海原。紅葉の足跡(茜色、柿色、黄金色、栗皮色)。

この長閑(のどか)な日本の風景は、飽きることがない美眺である。

山肌はこの冬でまた一皮剥け、新年に向けて艶やかな色彩を放っていくのであろう。

このコースは松が象徴的に配置してある。大仁コースINの11番、ショートホールでは、グリーン手前が崖。その斜面に高い松がそびえたっており、その高い松を超えた真裏にピンが切ってある。その松の枝ぶりは立派で、ちょうどY型の間にピンの旗が見えるという一景。設計者のJ・Eクレーン氏は、ほとんどのティーから美しい自然が眺められる、と言っているがまさにそれである。

フェアウェイも広々としていてアップダウンも少なく、ブラインドホールも少ない。グリーンは昨日の伊豆大仁CC同様に芝目がきつく、微妙な傾斜で距離感・狙い処を惑わせる。

それでも十分楽しめるゴルフコースで、我々も皆、満足をしたコースである。

大木選手は地を這うようなドライバーショットで強風も逆風もなんのその。

一方で、ちょっとふけあがり気味のドライバーショットの田胡選手は、逆風では思うように距離が伸びず苦労していた。神田選手はまだ腰の痛みが残っていて、ドライバーの飛距離が伸びず唇を噛んでいた。

ラウンド終了後は昨夜からの寝不足及び疲労&筋肉痛もあり、そのまま温泉も入らずに帰宅の途についた。体力、気力は鍛えなければ、老いるだけの体になってしまう。そうならない為に天中23のゴルフがあり、鍛えるための合宿がある。

今年初の天中23の合宿は無事に終わることが出来た。

一泊の短い合宿に過ぎないが、同志と酒を呑むことで至福のひとときを味わえた。大切なのは「自分は歳をとった」と考えないことではないか。自分の年齢の自覚はあっても、年齢で規制するものは何もない。まだ、何かを学ぼう、新しいことを知ろうという気持ちがあるうちは、老いは来ないと思っている。

だからまだまだ、酒もゴルフも平気っと言っている元気な奴に老いは来ない。

元気いっぱいの皆様、次回のご参加をお待ちしております。

2月は河津桜まつりがあるなぁ!(独り言)

春よ来い、早く来い!

下記、天中23 熱海合宿 ギャラリー

http://riddlef355.wixsite.com/amachu23golfcamp2016

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