第4回優勝 田胡選手
- riddlef355
- 2016年11月10日
- 読了時間: 6分
更新日:2022年8月17日





ドラコン賞:IN/田胡君、 OUT/加藤君
ニアピン賞:IN/森吉君、大木君 OUT/酒井
馬券当選者:田胡君/森吉君/酒井
爽やかな秋の空に薄い雲が張りついている。
コンペの前日は、関東で身を切るほどの北風が吹きつけた。気象庁は、昨年より16日遅い木枯らし1号を発表した。
立冬より遅い木枯らし1号は、暖冬を意味するとも言われている。
雲間から何本かの秋光が友の背にスポットライトのように照らしている。穏やかな日和に心を弾ませてはいるが、秋も終わりに近づき早朝は突き刺すような厳しい寒さを迎えるといった頃合いで、いまひとつはっきりしない季節の谷あいに、友は、いらいらした表情を見せていた。
「おお、寒っ!」
「こんな寒いんじゃ、飛距離も伸びないなぁ~。今日は飛ばないぞ。」
っと呟きながら、友は少し先にある練習場へ向かった。軽く汗を流すのであろう。
冬のような陽射しを浴びながら、凛とした姿で颯爽と練習場で白球を打ち始めた。
萌えるような朱色に染まる美しい森を後景に、‘カーーン’という乾いた打球音だけがこだましている。秋の美しい紅葉は、まるで真冬のような冷気を含んでいた。
練習場で何球か打っていくうちに、ボールがしっかりと芯に当たり始めたのだろう。
自分の打った白球をじっくりと目で追っている姿は、どこか晩秋の風に立つ粋な大人の風情があっていい。
それでも足元に吹く風の冷たさは、季節が真冬に移ろうと伝えている事がわかる。ひんやりとした空気が、肌に触れ全身を包んで行く。
少し体を動かした方が良いだろう。皆が練習場で打ち始めた。
どこの世界でもそうだが、続けることによってそれなりの姿や形になってゆく。ゴルフも同じで、クラブの芯でしっかりボールを捕らえるために、何度も練習すれば体幹や背筋の筋力が鍛えられ、身体の軸が微動すらせずに、真っすぐ強いボールが打てるようになり、距離も稼げるようになる。
虚しい徒労と思わず、満足できるゴルフをしようと思えば、‘続けることが大事’なのかもしれない。
軽く振っている姿が見事に身に付いていて、力みなく、リズムよく振っている。
前回から僅か3カ月しか経っていないのに………..
口には出さないが、強い意志の努力が重なっていることがそこに見える。
どこまで続けられるか。
あと10年か、15年は無理かな。
風の方向に目をやると、美しい奥武蔵の低山の頂きが連なっているのがわかる。そして、その目線を下げると、皆がINスタートの前で集まり始めている。
ちょこんとかぶったゴルフキャップのひさしに手を当てて、
「皆さん、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」と、彼らの口元は微笑みを浮かべていたが、目は笑っていなかったように思えた。
今回、個性あふれる天中23コンペに新メンバーが加わった。洞庭選手と合田選手。
ふと見た右手の甲が日焼けでいい色に焼けていたのは、ゴルフにいそしんでいる証拠であろう。心なしか安堵感のようなものが走ったし、ゴルフ好きの仲間が増えてまた嬉しかった。
やさしい秋風の中を歩いて来たような爽やかな二人だった。
今回仕事でどうしても参加できない菊池選手。急遽、出張となってしまった中澤選手。
残念でならないが、春は優勝を目指して一緒に闘いましょう。
さて、会場となったのは埼玉県寄居町にある寄居カントリークラブ。第一回目の小川CCの隣町で、最寄りのインターは関越道の嵐山小川インター。
自然の地形を活かした丘陵コースは、レギュラーティーでも女子プロ並みの6,500ヤード。
起伏を巧みに生かしたホールもあるため、セカンドからの距離感を掴むのは簡単ではない。グリーンはツーグリーンで共にベントグリーン、砲台になっているものもままある。高木や枝が邪魔をして、グリーンを遮るホールもある。
ラフも結構厄介だ。
ガードバンカーは砂の量が多い処もあれば、砂が薄くバウンスがはじかれる処もある。
コース戦略をしっかりと考えてプレーしないと、スコアは纏まり辛い。
さりげない自然の風景の中に、極めて高い戦略性が潜んでいるコースではないか。
コース設計は安田幸吉。自らプロゴルファーとして、また初代PGA会長としてゴルフ界の草創期を牽引。北海道の小樽CCなど50を超える設計や監修に携わっている。
8:00 INコース
1組目、森吉正孝、加藤誠二、田胡良明、合田幸雄
2組目、大木秀夫、神田泰宏、河合泰子
3組目、原豊、洞庭良幸、酒井宏晋
今回は、森吉選手が3連覇を掛けて挑んでいる戦いでもある。
第2・3回と圧倒的な強さを見せて優勝を重ね、カップに自分の名を刻み続けている。
それだけではない、森吉選手は第一回目から連続でベスグロを奪取して、やりたい放題である。
本当の実力を競わせたら森吉選手は、強靭な体幹とどっしりした下半身でナンバーワンかも知れない。しかし、ゴルフはそれだけではない。
先日、練習ラウンドしてきた彼からメールが来た。
「……………..スライスが止まらない、ヤバイ!」
しかし、今日の顔は違う。という事は、先日のメールがなんだったのかと、疑いたくもなる。
自信ありげににっこり笑う森吉選手を横目に、皆、いつになく真剣な表情でバックからドライバーを抜き取ったり、ティーやボールを出したりしている。
幹事の森吉選手から今回のルール説明を、皆、ひどく神妙な顔つきで聞いていた。
はっきりした線引きを付けようとする森吉選手に対し、正面から対峙するだけの強さを秘めた友は、心の中で言い放った。‘今回は絶対に譲れない!’。
そろそろスタートの時間だ。
気温は低いが風はさほどなく、絶好のゴルフ日和となった。
最初のハーフが終わって、皆、唇を噛み締めるようにクラブハウスに戻ってきた。
スコアは口元でわかる。唇を歪めるようにして、行き場のない無念さを自分の中で感じ取っているのがわかる。誰にもぶつけようのない怒りと悔しさがこみ上げて来る。口数が少ない。
「おれは、日本酒熱燗!」
「俺は焼酎水割りダブル!」
「オレはウイスキー水割りダブル!」
と友が吐き捨てるように言った。
ゴルフは上手くいかないことで得るものが多いと思う。願いがかなわなくても、何かに夢中になっていた時間は色褪せない。
ラウンドが終わると友は思い思いの表情をして、マスター室にスコアカードを提出し、クラブハウスに引き上げていった。
顔は、険しいままだ。
その時、ふと、森吉選手が吐き捨てるように言った。
「グリーンに蛇がいるんだよ!」
「それが鳴くんだよ!」
「ニョキニョキ!」って。
優勝は、田胡選手でした。
その日の夜は、蜂の巣を突っついたような大騒ぎになっていた。どの顔も皆、興奮していた。
今回、森吉選手を相手に8人の侍と、一人の女が勝負に挑んだのである。その女から威勢のいい声が聞こえて来た。
「おい、正孝、ちょっと顔色が悪いぞ、飲め、飲め、飲んで身体洗わんといけんぞ。」
「連続優勝なんて、どうでもええ、酒や、酒や、どけどけ、そこ、どかんかい!」
その一方では、優勝の田胡選手は歓喜に満ち、勝利に酔っていた。
「気心知れた連中とやるゴルフは、本当に楽しいね。」
周りの友が赤い顔して頷いている。
「そうだよね。」
「生まれ育った街で、闘いが終わった後の酒が飲める。これがまた楽しいよね。」
急遽、田巻君も飲み会に駆けつけてくれてさらに大騒ぎとなった。
次回は、‘田巻君’ではなく、‘選手’として参加かな?
競い合う友が増えて楽しみだな!
他にもいるかな?
優勝を逃した正孝は、次から次へと浴びるように飲んでいた。
酩酊(めいてい)している正孝が何か呟いている。
「マダマダコレカラダゾ!」
満足できるゴルフをしようと思えば、焦らず、自分を信じて地道に努力を重ねていくことしかないかも知れない。 狡猾(こうかつ)な手段を選らばず、謙虚に闘い続けることが大切なのだろう。 勝負の勝ち負けは、どちらかが引いた瞬間に決まるのだから。

























































































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