第9回優勝 中澤選手
- riddlef355
- 2018年3月8日
- 読了時間: 6分
更新日:2022年8月17日




ドラコン賞:東コース/奥川選手、 西/奥川選手
ニアピン賞:東/該当者なし、奥川選手 西/洞庭選手、田胡選手
馬券当選者:中澤選手、田胡選手、洞庭選手
雨が降っている。
いつもならゴルフ・コースに着くと、さっさとグリーンでパッティングをしたり、ドライビングレンジで打ち込んだりと慌ただしい連中なのだが、その日はマスター室の前で何人かがぽつんと、冷たく濡れた芝を眺めている。流れる雲も、寒々とした木々のこずえも目に入らない。うつろな視線を宙にさまよわせ、深々と溜息をついている。
「まいったなぁ、この雨は」
「今日一日、こんな感じだね。きっと」
「雨だと、グリップが滑るし、レインウエアで腕がゴワゴワするなぁ。ボールに泥も付くし…」
この時季は、おおよそ三寒四温の周期をほぼその通りに繰り返していた。その週の始めは春の兆しが感じられ、気温も上昇したのだが、週の中頃から厚い雲が冬空に広がり、コンペの朝はとうとう真冬に近い気温にまで戻ってしまった。雨はさらに追い打ちを掛ける様に、時々本降りに変わる時もあった。
マスター室の前を歩くゴルファーの姿もまばらな「おおむらさきゴルフ倶楽部」。パッティンググリーンで練習しているプレイヤーの影は、我々以外にはいない。
ここ、おおむらさきゴルフ倶楽部は、2010年にシニア・マスターズが開催されたシニアに聖地ともいわれる本格派トーナメント・コース。素晴らしいコースなのだが、生憎の雨にたたられ気分的に皆、参っている様だ。
1組目のスタートは8時20分だったが、その時間までの予約組が全てキャンセルとなったため、この時間にもかかわらず我々が一番のスタートとなった。前の組は当然としても、後の組もいない寂しいスタートとなった。
し・か・し、
雨が小降りになると、どこかでなりを潜めていたラテン系の陽気な天中23会の連中が声を上げて騒ぎ始める。
「集合写真撮るよぉ!何をそこでベチャクチャ、喋っているんだよ!」、と神田幹事が気合を入れる。
「オーイ!ほら、集合写真撮るよ~」
「折角、プロのカメラマンに撮ってもらうんだから」
プロのカメラマンとは、来場客の集合写真やティーショットを撮って、その写真を売ることを生業にしている方なのだが、おっとりとした人柄で口数も少なく、人の好さそうな顔をしていたので、こちらからカメラを渡して『撮ってくれますか』、とお願いしたら、以外とあっさり引き受けてくれたのだった。
「ほら…….、撮るよ!」
「ハイ、チ~~~~ズ。ん?」
その時、ティーグラウンド脇のトイレから中澤選手がひょっこり姿を現した。
「ちょっと待って!おい、中澤!早く来いよ!集合写真撮るよぉ!」
「誰も中澤が居ないのを気付かなかったのか!?」
集合写真で整列している処に中澤選手が後ろの列に並んだ。
「それほどまでに、俺の存在感が薄いのか!向こう側が透けて見えそうなくらいに、頭の毛の薄い奴もいるというのに!」
「俺じゃあ、ないよ」
こんな具合に第九回天中23コンペが始まった。
確かではないが、このあたりから中澤選手は、自分の存在感をアピールするために密かに優勝の二文字を胸に描いていたのではないか。
『今日は雨だしなぁ。コース戦略とパットだけ気を付けてやれば優勝はあるかもな!連中の心理をそんたくすれば、『どうせ』スイングの事ばかり考えているだろうから….』っとこんな風に自身で2度目の制覇を妄想する中澤選手である。
まずは一組目のスタートである。
先陣を切るのは前回優勝者の神田選手。大木選手、合田選手、奥川選手の4名。
続く2組目:加藤選手、田胡選手、河合選手。
3組目:洞庭選手、原選手、中澤選手
ラストの4組目:菊池選手、森吉選手、酒井選手。
前半は中澤選手がこの雨の中45でまわり、続いて加藤選手が46の好成績でクラブハウスに戻ってきた。こうやって、良いスコアで回ってきた者もいれば、自分に期待をしていたけれど、思った以上に叩いてしまった者もいた。条件は皆同じだが、雨に対するやりきれなさが胸にあふれている。
『前回コンペから3か月間、結果をだすために調整して来たのに…』っと、その言葉を胸の奥にしまい込む連中もいた。
後半が始まっても雨は降り止まない。
グリーンに雨水が溜まることもなく無事に18ホールが終了して、全員更衣室に引き上げて来た。その日は寒かったこともあり体は随分疲れていたと思う。悪天候の中、志半ばで戻って来た連中は顔を上げることなく、誰もが口数が少なく、胸にしまっている口惜しいうっぷんをぶちまけたくなる思いであった。
パーティも始まり、なんとなく『優勝がない』と自分の勘でわかる連中は、自然と口数が少なくなる。少し顔の引きつった合田選手は小原選手からの期待もあり優勝に邁進したのだが、スコアは伸びることはなかった。加藤選手も前半は良かったが、後半は思ったようにスコアが伸びず…。洞庭選手に期待が集まったが、運が回ってくることもなくホールアウトした。原選手も練習ラウンドでは良かったが、不本意な結果となってしまった。
「それでは、ドラコン賞から発表します」神田幹事よりコンペの表彰式が始まった。
東コース 奥川選手!
西コース 奥川選手!
「あれ、2個とも!?」
続いてニアピン賞
東コース 奥川選手! (2番は該当者なし)
西コース 洞庭選手、田胡選手
そして、栄えある優勝は!
ベスグロの完全優勝で
「中澤選手、2度目の優勝制覇」
考えてみると、コンペ当日の打ち合わせをすっ飛ばして、今回のコンペに駆けつけてくれた中澤選手。
寒さで両手がかじかみ自分の手に熱い息を吹きかけたり、強い雨が降れば傘を開いたりつぼめたりと忙しいラウンドであったが、中澤選手は自分のリズムでパッティングし、自然のテンポでスイングしているようだった。やはり、勝つべき人が勝ったという今回のコンペ。水が納まるところに納まって大きな河の流れが生まれれるように、どんな天候状況でもムキにならず、常にマイペースを保つことが出来れば大きなご褒美になるということなのか。
第九回天中23コンペの楽しい宴は、荻窪に戻ってからいつもの「きざみ」となった。
志を得ないまま鬱憤を胸に仕舞って、居酒屋で痛飲し、大いに語り合うのである。
仕方がないと言えば仕方がないと思うが、それでも楽しいのが何よりで、あきらめない連中であることが嬉しい。
敵愾心と思えるほどの気持ちでぶつかってゆく連中は、眼の色で感じることが出来る。敵は自分の中に潜んでいる「老い」である。人生に対して白旗を上げる連中はいない。たぶん、70才になっても、75になっても、まだまだ現役なのだと思う。
今回、準優勝を捥ぎ取った田胡選手のように、大木製作所で作ってもらったコルセットを巻いて、不撓不屈の精神で這い上がってくる強者は、運命の神様にゴマをすったりせず、それこそ、ケンカ腰で向かって行っているではないか。でも彼は、大木選手に対し、一言では言い尽くせない程の感謝の気持ちでいっぱいだろうし、今後一切、大木製作所に足を向けて寝ることはなかろう。

































































































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